肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞に発生する悪性腫瘍のこと
肺がんの多くは、発見が遅すぎて効果的な治療を行うことができず、最も致死率の高いがんです。
早期に発見された場合は、手術や放射線治療でその多くを治癒することができます。
2016年にがんで死亡した人は372,986人おり、肺がんは最も死亡数が多い部位です
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
肺がんの特徴は、他の部位のがんに比べ、いろいろな臓器に遠隔転移しやすい点です。
※遠隔転移…がん細胞が血液に入りこみ離れた臓器に転移して増殖すること
肺がんの症状は、初期症状ではほぼ無症状です。病状が進行するにつれ、咳や痰、発熱、息切れ、呼吸困難、胸痛などの呼吸器症状があらわれます。
他の呼吸器疾患との区別がつきにくいため、発見が遅れてしまうことがあります。
それ以外にも、腫瘍が特殊な物質を生み出したり、免疫反応による影響で起こる症状(腫瘍随伴症候群)もあります。
この場合、顔のむくみや食欲不振、神経症状、意識障害などの症状が見られます。
肺がんと診断されたら、そのがんがどのくらいの大きさなのか、他の臓器まで広がっていないかどうか、さらに詳しく検査を行い、がんの進行度合い(病期、ステージ)を決めます。
病期の評価にはTNM分類と呼ばれる分類法を使用します。これは、「がんの大きさと浸潤(T因子)」「リンパ節転移(N因子)」「遠隔転移(M因子)」の3つの因子について評価し、これらを総合的に組み合わせて病期を決定する方法です。
肺がんでは、病期は0期、Ⅰ期(ⅠA、ⅠB)、Ⅱ期(ⅡA、ⅡB)、Ⅲ期(ⅢA、ⅢB)、Ⅳ期に分類されます。
T因子(T:原発腫瘍 primary Tumor)は「がんの大きさと浸潤」を示します。
がんの大きさと浸潤(がんが周囲の臓器に入り込むこと)の状態によって、T1~T4の4段階に分類します。
T1a | 腫瘍の最大径が2cm以下 |
T1b | 腫瘍の最大径が2cmを超えて3cm以下 |
T2a | 腫瘍の最大径が3cmを超えて5cm以下、あるいは3cm以下で胸膜に浸潤がある |
T2b | 腫瘍の最大径が5cmを超えて7cm以下 |
T3 | 腫瘍の最大径が7cmを超え、胸壁(きょうへき)、横隔膜(おうかくまく)、胸膜(きょうまく)、心嚢(しんのう)(心臓を覆う袋状の膜)などに浸潤がある、または主気管支への浸潤が気管分岐部から 2cm 未満 |
T4 | 縦隔(じゅうかく)、心臓、大血管、気管、食道などへの浸潤がある |
N因子(N:所属リンパ節 regional lymph Nodes)は「リンパ節転移」を示します。
リンパ節転移のない場合はN0、転移がある場合にはどこまで転移しているかによってN1~N3の3段階に分類します。
N0 | 所属リンパ節転移なし |
N1 | がんのある肺と同じ側の気管支周囲かつ/または同じ側の肺門、肺内のリンパ節への転移がある |
N2 | がんのある肺と同じ側の縦隔かつ/または気管分岐部のリンパ節への転移がある |
N3 | がんのある肺と反対側の縦隔、肺門(はいもん)、同じ側あるいは反対側の前斜角筋(ぜんしゃかくきん)(首の筋肉)、鎖骨上窩(さこつじょうか)(鎖骨の上のくぼみ)のリンパ節への転移がある |
病期(ステージ) | T(腫瘍) | N(リンパ節) | M(転移) |
ⅠA期 | T1a(≦3cm) | N0 | 遠隔転移なし |
ⅠB期 | T1b(≦5cm) | N0 | 遠隔転移なし |
ⅡA期 | T2a(≦5cm) | N1 | 遠隔転移なし |
ⅡA期 | T2b(≦7cm) | N0 | 遠隔転移なし |
ⅡB期 | T2b(≦7cm) | N1 | 遠隔転移なし |
ⅡB期 | T3(>7cm、胸壁浸潤等) | N0 | 遠隔転移なし |
ⅢA期 | 大きさ無関係 | N2 | 遠隔転移なし |
ⅢA期 | T3(>7cm、胸壁浸潤等) | N1 | 遠隔転移なし |
ⅢB期 | 隣接重要臓器に浸潤 | N2 | 遠隔転移なし |
ⅢB期 | 大きさ無関係 | N3 | 遠隔転移なし |
Ⅳ期 | 大きさ無関係 | 転移の有無無関係 | 遠隔転移あり |
肺がんの原因のなかでは、最も注意しなければならないのが「たばこ」です。
たばこには、発がん性物質といわれる有害物質が肺の細胞にダメージを与えます。
喫煙者が肺がんになる可能性は、喫煙量や期間、時期により個人差はありますが、喫煙をしない人と比べると、男性は4.8倍、女性は3.9倍に増加するといわれています。
また、喫煙をしない人でも受動喫煙により肺がんのリスクが高まります。
※受動喫煙…たばこから出る煙や喫煙者が吐き出した煙を他の人が吸入すること
他にも、ウラニウムという物質から放出される放射性の気体や、アスベスト(石綿)も肺がんのリスクを高めるといわれています。
肺がんは、呼吸器官の細胞に腫瘍ができます。そのため過去に肺結核や気管支喘息などの疾患があった方は、肺の細胞がダメージを受けやすい状態の可能性があります。
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喫煙者は禁煙し、喫煙しない人は、たばこの煙を避けることが予防するうえで大切なことです。
日本では、肺がん予防対策として喫煙する場所を制限することで徐々に対応が広まっています。
また肺炎球菌ワクチンの予防接種をすることが、肺がんのリスクを下げる予防効果があるとされています。
・がんは医療技術の進歩により、早期に発見できれば完治する病気
・健康な状態のうちに定期検診をすることが、最も効果的な予防法
検診の間隔は部位別により異なりますが、気になる症状がある場合には、検診を待たずに医療機関を早期に受診するようにしましょう。